高齢者の安全を守る日頃心掛けたい防犯
更新日:2012/09/14
侵入による窃盗被害を避けるための日頃心掛けたい防犯や、高齢者の安全を守るための周囲の目配り・気配りのポイントについてご紹介します。
高齢者数だけでなく高齢者の単身世帯が増えています。
また子どもと離れ、夫婦だけや一人暮らしをする高齢者世帯も年々増え続けています。厚生労働省の「平成22年国民生活基礎調査の概況」によると、65歳以上の単独世帯数は約500万世帯を超え、高齢者世帯の約4世帯に1世帯が一人暮らしという状況です。
今後も高齢化は進むと予測されています。
高齢者の被害件数が最も多い「窃盗」。確実な施錠はもとより、高齢者世帯と悟られないことが大切です。
平成22年の総犯罪件数125万7千件のうち、65歳以上の高齢者の被害件数は13万7882件で、10件に1件以上の割合で高齢者が被害にあっています。
高齢者の被害件数で最も多いのが「窃盗」で76.0%、続いて「詐欺」4.8%、「暴行」1.3%、「傷害」1.2%、「強盗」0.3%となっています。
高齢者が窃盗犯等に狙われる背景としては、高齢者が若い人に比べて防犯意識が低く、無防備になりがちであることが挙げられます。「隣の家の人がいるから大丈夫」、「鍵をかけると泥棒に留守だとわかるから鍵はかけない」、「泥棒に入られても、取られるようなものはないから大丈夫」と思い、昔からの習慣で無防備に、戸締りや施錠をせずに外出してしまう高齢者は少なくありません。また、窃盗犯等は高齢者宅であれば、たとえ鉢合せをしても体力的に優位にあるという安心感があり、意図的に高齢者宅を狙っている場合もあります。
窃盗犯に侵入されやすいのは、1階や2階が無人になっている時や入浴中です。特に単身世帯の場合は入浴中の音で部屋が無人状態だと判断されてしまいます。犯人から身を守るには、面倒でも「在宅中も施錠」が鉄則です。
また、窃盗等の被害から身を守るには、高齢者だけの世帯だと悟られないようにすることも大切です。
例えば、「表札は家族構成がわからないように苗字だけにする」、「郵便物をためない」などして、家族構成がわかるようなものは人目につかないようにします。その他、時には「日中に全ての部屋の雨戸を開ける」、「夜間は複数の部屋に明かりをつけて家族がいることを装う」のも効果的です。
高齢者特有の心理を利用する「詐欺」にあわないためには、周囲の協力が必要です。
一方、高齢者が被害者となっている割合が圧倒的に高いのが「詐欺」です。「振り込め詐欺」などは、高齢になると判断力の低下と、子どもや孫を心配する心のやさしさ、また、孤独感といった高齢者特有の心理を利用したものが多く、年々手口が多様化・巧妙化して見破りにくくなっています。
このような犯罪から高齢者を守るには、高齢者自身が様々な犯行パターンがあることを理解し、「だまされない」と強く意識すること、また、自分自身で判断する前に、必ず近親者や周囲の人々、または、近くの警察に確認することが大切です。周囲のサポートとしては、高齢者が無防備にならないよう、頻繁に連絡をとって高齢者の動向を把握することが大切ですが、特に家族と別居している場合は、近隣の方々の協力も必要です。
「何か変わったことはありませんか?」、「家にいる時も鍵をかけてくださいね」といった防犯の話題を積極的に交わすなど、近隣の方々の協力で高齢者自身の防犯意識を高めていくことが大切です。
急病などの万が一に備えて、近隣の方々のきめ細やかな「目配り」と「気配り」が大切です。
「一人暮らしの高齢者が死後数カ月経って発見された」といったニュースは誰もが聞き覚えがあることでしょう。高齢者を取り巻く危険な要素は、犯罪以外にも、「孤独死」、「急病」、「火災」、「地震」などさまざまです。その中でも、内閣府が全国の60歳以上の方を対象に実施した「高齢者の地域におけるライフスタイルに関する調査(平成21年)」によると、全体の43%の人が「孤独死」を身近な問題として感じています。
孤独死にまで至らなくても、高齢になるほど急病やケガなどで助けが必要になることが多くなります。
消防庁の統計では、平成21年中の全国の救急車による搬送人員の高齢者の割合は49.3%となっています。この割合は年々増加傾向にあり、高齢者世帯や高齢者単身世帯の増加により、救急車にしか頼れない現状が背景にあると考えられます。
高齢者だけの世帯や高齢者の単身世帯では、いつもと違った様子がないかといったことを近隣のコミュニティで見守るような環境があると安心です。見守りのチェックポイントは、特に声をかけなくても、例えば「いつも干している洗濯物が干されていない」、「夜になっても洗濯物が取り込まれていない」、「新聞受けに新聞がたまっている」、「朝から一度も見かけない」、「ふだんは照明がついている部屋が暗い」などがあります。さらに家族と離れて暮らしている方は、万が一の際の家族への連絡も、近隣の方に依頼しておくとよいでしょう。
高齢者自身が自分で自分の身を守るという心構えを持つとともに、家族や近隣者など身近な人々によるきめ細かい「目配り」と「気配り」で高齢者の安全な暮らしを守りましょう。
※本ページの内容は、関電SOS季刊誌「住まいring」Vol.20(2011年12月発刊)掲載の情報です。